主宰インタビュー


─── まずはおつかれさまです。

池里:   おつかれさまです。あ、コーラアップ食いながらでもいいですか。

─── もちろん。でも、飛ばさないでくださいね、コーラアップ。

池里:   ええ。気をつけますよ。

─── さて、カリフォルニアバカンスですけど、いよいよ第10回公演ですね。ここまでのところ、雑感としてどうでした?

池里:   まさか10回まで続くと思いませんでしたね。

─── あれ。そうなんですか?知らなかった。

池里:   ええ。…最初はなんかほんとやることなくて、腐ってた生活からはじめたので。 大学いっている時は、ほんと、いろんな方に迷惑かけました。 いや、でも一本一本マジに作ってますよ。ほんと。作る気持ちは、いつだって真剣10代しゃべり場。

─── しゃべり場だったんですね。(笑)

池里:   ええ。(笑) まあいろいろありましたけども、おかげさまで今ようやくそれなりに自分が目指すものが見えてきたという感じです。 カリバカらしさ、というものがお客さんの中でもなんとなく出来てきたんじゃないかな、とアンケート見る限り思ったりします。

─── 第10回公演ですが、期間中に二種類の公演を行うということですが、それはどういった理由で?

池里:   いつも作品を作るときにいくつもいろんな発想が浮かぶんですけれど、結局、最終的にひとつを選ぶわけじゃないですか。 同じタイトルでまったくカラーが違うものはできないだろうか、と思ったのがきっかけです。 僕はコメディもホラーも両方好きなのですが、1公演に1本しか上演しないとなると、いつもならコメディを書く、ということになるんですけれど、もし2本できるのならば、別の側面も見てもらえたらなぁと思うのです。 物事ってのは、進み方とか雰囲気、状況によって面白くも怖くもなるものです。ひとりの人間から出た2つの発想を見てもらえたらと思っています。

僕の友人で金倉という男がいるのですが。彼が卒業する時分に僕にこういったのです。 「お前。卒論、絶対おわらないぞ。」と。そりゃ僕はプレステ2買ってしまいましたから。

─── (またその話かよ!)

池里:   さて、それから数ヵ月後、卒論提出日に彼は遅れてきたのです。 「お前、卒論終わったか?」ときいてきたのです。僕は「もちろんさ」といいました。大事なのはここからです。 もし……ここで、僕が彼をあざ笑い、卒論のページ折りを手伝わなかったらどうなったでしょう。 彼は留年し、おそらく……復讐の男となって僕の前に立ちはだかったはずです。 ところが、僕は何も言わず、彼の卒論のページ折りを手伝いました。

─── (カットしますよ。)

池里:   えー……なんでしたかね。スベスベマンジュウガニの話でしたっけ?

─── 卒論はともかくとして、前回第9回公演「秋空マンゴー」から8ヶ月ぶりの新作、ちょっとブランクおいての公演になります。 今回公演で実施する2本は、それぞれ全く別内容になってくるということですね?

池里:   よく2本同時公演とかでやるような、台本の一部分だけ書き換えとかラストだけ違うとかではなく、新作2本書き下ろしになりますので。 お暇なら是非、2本見ていただきたいと思います。 「もしも島田が願うなら」このタイトルから思い浮かんだ2つの話。いわば…パラレルワールドを楽しんでもらいたいですね。 ここでのこの人の設定はこうだけど、このお話では違うんだ……へぇ……とかうなずいたり。 一本、一本きちんと独立したお話なので、もちろん単独だけでも楽しめますが、2本見るとおそらく不思議な気持ちになるでしょう。 そして身近な友人に「島田」という苗字の人がいたらちょっと観察してみたくなってしまうはずです。こいつは…こういう島田か、と。 あとですね、内容的にまったく関連してないわけではないんです。島田という人物が3ヵ月後に死んでしまうという設定は同じです。



■黄公演:アホへの扉はきっといたるところに存在する……気づかないだけで。


─── なるほど。では、それぞれの公演についてすこし踏み込んでおうかがいしたいのですが、まず今回、「黄・黒」という区別をつけています。 「黄」がコメディサイド、「黒」がホラーサイド。まずは「黄」コメディサイドについて。

カリフォルニアバカンスといえば言うまでもなくコメディ劇団としてここまでやってきていると思いますが、 今回は2種類あるうちの1パターンになってくるわけですが、ざっとでいいんですがどんな展開になるのでしょうか?

池里:   余命3ヶ月の島田君が主人公です。彼を心配して集まったかつての同級生たちが、島田君にどんな願いでもいってくれ、できる限りかなえるよ……と提案します。 ところが……願い事がことごとく、なぜか島田君の望まない方向へ動いていくんです。死への恐怖より、意味不明な立場におかれる。3ヶ月で死ぬっていうのに。 島田くん個人としては大迷惑な状況でも、はたから見れば笑ってしまう。それが深刻であればあるほど滑稽に見えてくる。

笑いだけでない何か、もたくさん内包された物語です。 要所要所で「あ、くだらねぇ…。アホや。」と思いつつも話にどんどんひきつけられてしまう、展開の読みにくい意外性のある舞台にしようと思っています。 アホへの扉はきっといたるところに存在する……気づかないだけで。そんな感じですかね?

いつも通りのコメディ、コメディあってのカリバカですからね。こちらはカリバカらしい「笑い」を見せていきたいです。

─── ところで、カリバカらしい「笑い」に元ネタとか源泉とか、そういうのってあるんですか?参考にしている作家さんとか。

池里:   元ネタって言えるほどのものは、特にありませんが。僕は男子校出身なもので、基本的に男子校というのは生活しているだけでもうくだらないことだらけなのです。 思春期の大事な時期に女の子のことなんか考えずにいかに世界地図からエロっぽい地名を探すかを考えて過ごしていたり。 いかに友達に「アホだな。」といわれることが男の勲章だったものですから。 弁当箱を一ヶ月湿気のあるところに放置して、中の様子を見るゲームとかやってましたから。

─── ほんとアホですね。それはゲームですらないですね。

池里:   ええ。でも…ドキドキするんですよ。フタあける瞬間。あれがコメディなんですね……いや、あれはコメディじゃないですね。 あと、男子トイレのにおい玉をとってきて、あらぬ彼方へ投げたり。雨の日はかさ袋に水をいれて屋上からおとすとすげえ音がするというゲームをしてました。 学食の自由に味噌汁がとれるところがあるのですが、カラシとドレッシングをいれてうまーく、味噌汁の色がにごらないように混ぜて、元の味噌汁のおいてある場所に戻してそれを飲んだ人が吐くのを遠くから見て楽しむというのも役に立っています。 ガチャガチャのカプセルに蜘蛛をいれて、坂道から転がすと繭玉ができるという遊びとかも多分、今の作品にいきてると思います。 あと、ゲーセンのメダルを「100円だー」といって道にまいて物陰から通行人が拾って「チッ」というのを、友達とそっと見まもるという遊びも役に立っているのかもしれません。

─── そんなもんなんでしょうか……?

池里:   ごめんなさい。そんなもんです。俺。

─── でも、そういう日常生活にちょっとしたイタズラを仕掛けてそっと見守るような、モノの見方としては確かにそれがなによりのカリバカらしさと言えるのかもしれませんね。

池里:   ええ、うまくまとめてくれましたね。そういうことです。きっと。



■黒公演:コメディとホラーは似ている


─── さて、ではこのあたりでもう一方の「黒」公演、先にお話したとおり、カリバカ=コメディでここまで来て、第10回公演にして新展開のホラー。数年前から映画なんかも多いですよね。ホラーもの、よく観るんですか?

池里:   ええ。結構よく観ますね。小説も映画も怖いの好きなんです。
血とかたくさん出るスプラッタよりも、精神的な、追い詰められていく怖さ、みたいなもののほうが好きですね。 たとえばスティーブンキングの「ミザリー」のように、ああいう女性の一方的な思い込みの怖さとかが見えるものが好きです。

今回の「黒」公演なんですがそういうちょっと人間の内面的な怖さとかを出せたらな、と考えています。 主人公が「3ヶ月で死ぬ」という設定を生かして、普通「死」というのは厳粛で神聖で、そして人々は死ぬ前の人間にはとても寛大なものですけれども……その約束みたいなものが理不尽に壊されたらとても怖いな、と。 あと、カリバカは基本的にはおろかだけれども愛すべき人間を今まで描いてきたつもりです。 でも、僕はいろんな人間を描きたいなと思いまして。根っから残酷な人間。そして、最初は残酷ではなかったのに環境によって残酷になってしまう人間。 そういう人間の怖い部分みたいなものも楽しんでもらえたら、と思ったのです。

もちろん。お客様の中には「面白いものだけみたい」という方もいると思います。 そういう方には黄色のほうを見ることをオススメしますが、「怖がること」を楽しめる方には是非、黒も見ていただきたい。 エンターテイメントというのは単純に「笑える」だけでなく「いかに楽しめるか」だと思ってます。 人間は、優しいだけだと飽きてしまう。残酷なだけだとそれも。 カリフォルニアバカンスは様々な人間を見せる劇団にしていきたいと思っています。 きちんとしたストーリーであればホラーであれ、コメディであれ、喜んでいただけるのでは、と思っているからです。 2公演関連性が一見ないようですが、ひとつのタイトルで笑えるものと怖いもの、2つのパターンをお見せすることで、カリバカの可能性を見ていただけたらと思います。面白いくらい雰囲気違いますから。

─── 前回公演より脚本に加えて演出も主宰ご自身で担当していますが、そのあたり脚本家として、演出家として、主宰として変化はありましたか?

池里:   やはり、自分の意思をダイレクトに伝えられるというのが大きいですね。 たとえば演出家が別にいると、ギャグのタイミングとか僕は口だせないんですけども、自分でやるとリズムとかも言えるのでその点は楽ですね。 やりながら「あ、ここもっと変えたほうがいいかもな」とか修正がしやすい。 作演が別々だと話あわなければいけないことが、作・演出を兼ねることでその作業をぬくことができます。もちろん責任は全部かかってきますので言い逃れはできませんが。 イメージを役者に直接いえるから、やきもきしないですみますね。自分を100%だせるのがいいところだと思います。 もちろん、作演、別々にいるメリットもあると思うので。どちらがいいか、とはいえません。ただ、前回公演の成功で自信がつきました。

─── 今回、特にホラーという劇団としてはじめての領域に踏みこんでいくわけですが、ホラーという作品の特性を考えると、舞台全体の演出が非常に重要なものとなってくることが予想されますが?

池里:   はい、そうですね。そのあたりは結構考えています。ただ、ある意味コメディとホラーは似ているところがあります。

─── 似ているといいますと?

池里:   たとえばヤマの作り方。 基本的には怖がらせるのも笑わせるのも手順というのがあるのです。そのステップというか流れはとても似ていると思います。

「呪怨」という映画あるんですけど、あれ「本当に怖い」という人と、「笑った」という人がまれにいるんです。 で、僕も映画見に言ったんですが、たしかに笑っちゃってる人いて、その気持ちわかるんですよ。 流れがある程度読めてくると「あ、次、どうせでてくるんでしょ、オバケが。」と思うんですね。客も。 で、これってコメディなんかでも「あ、次のオチ、こういうんでしょ。」と客が予想することってあるでしょう。

つまり、どちらも手順というのがあるからお客さんは展開がよめるわけで。脚本家はそういう公式のもとにみんな作っているのです。 マイナスの感情をオチとしてもってくるか、それともプラスの感情をオチとしてもってくるか、それだけの違いです。 ただ、下手な作品はオチが読めてしまうわけで。いかに読ませないかが腕の見せ所ですから、そのあたりも確認しに是非、見に来ていただければと思います。

─── なるほど。お弁当一週間放置して遊んでたのと同一人物とは思えない真摯なコメント、ありがとうございます。

池里:   まぁ、ほら・・・2面性ですよ。僕にも2面性がある。そして公演も黄色と黒がある。そしてコーラアップは燃やすとくさい。アサリくさい。

〜 この時、コーラアップの食べかすのフィルムに喫茶店のマッチで火をつけて、消している。お店の女の子の冷たい視線が痛い。 〜

そういうことなんです。

─── 他になにかございましたら。

池里:   カリフォルニアバカンスという劇団名から、みなさん明るくてにぎやかでカロリー高めの物食ってるような劇団なんじゃないの?って思ってると思うんですけど、いや、にぎやかな時もあれば、我々も釈迦みたいな時もあります。 カリバカは「こういう劇団でしょ?」などと思わずに。 ほら、カリフォルニアだって治安悪いところもあったりするじゃないですか。バカンスだって楽しいバカンスじゃないバカンスもあるじゃないですか。社内旅行とか、楽しくないじゃないですか。 だから、いろんなカリフォルニア、そしていろんなバカンスを想像してください。明るいものも怖いものも食らいつくしてください。 で、ビオフェルミンとか飲んでよく寝てください。 我々はカリフォルニアバカンスですが、誰もカリフォルニアなんていったことないです。俺、サイパンしかいったことないです。 そんなもんなんです。 でもこういう劇団名なんでよろしくお願いします。 それと……今回第10回公演は2公演分にあたりますので、お早めな予約は必須でございます。

本当に黄色だけでいいんですか?

本当に黒だけでいいんですか?

自分の胸に手をあてて、予約しておいただければと思います。

以上。(笑)



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