─── では、インタビューをはじめるんですが……なにやってるんですか?

池里: カブト折ってるんです。いります?

─── 結構です。はじめます。

池里: はい。



■ふたりの内的な問題が「癒されるかどうか」が今回の話の鍵



─── 前回第10回「もしも島田が願うなら」が今年の7月でしたから、5ヶ月ぶりの登場となるわけですが前回公演からここまで、いかがでした?


池里: そうですねえ、前回はサスペンスとコメディという系統の違うものを同じタイトルで見せるという挑戦でした。
ひとつの公演期間に2本の公演をやったのは初めてだったので、池里、ちょっと疲れました。


─── 疲れちゃいましたか、池里。


池里: まあ、自分のことを池里といってみたかっただけなんですけどね。

今回も前回と同じことをやっても意味がないですし、前回のボリューム感に負けないくらいの個性ある作品をつくらなければならない。
なので今回、素材探しにはちょっと苦労しましたね。


─── 今回の「Nemurita」ですが、また今までのカリバカの公演タイトルの中でもひときわ不思議なタイトルですね。


池里: 今までのもタイトルではよくわかんないのありましたけどね。
「噂のアレ」とか。でも、それ以上に不思議感あるかもしれませんね。


─── 今回は催眠術の話ということで。このタイトルにも催眠術と関連した意味があるんでしょうか?


池里: 「眠り」とかけているわけですが。厳密にいうと、催眠術は眠るための術ではありませんけども。一組の男女の、不思議な出会いのお話ですね。


─── 「男と女」がメインとして前に出てくる物語は第7回公演「museum!」以来です。


池里: わりと映画的なお話でしたね。ミュージアムは。泥棒と警備員ですから。
よくある構図の中で どうカリバカなりのものを見せていくか、があの公演の狙いだったのだけど、今回のは素材自体なかなか珍しいのではないか、と思っています。
眠れない女と、催眠術の才能がある男の話ですからねえ。


─── ちょっと特殊な設定ですよね。


池里: 最近眠れない人増えているらしいです。そんなところからちょっと思いついたのですけど。
「癒し」と「眠り」、そういう漠然としたものを素材として使えないかなあと。

実際「癒しブーム」っていってるけど、癒しってなんだろう、って考えたことありません?なんか 世の中結構疲れてる、っていうようなことは言われていて、今、そういう「癒しグッズ」が売られているわけだけども。
僕も「リラックマ」とか好きなんですけど、やっぱり物にたよらないと癒されないのかと、不思議に思いまして。


─── 今回のお話ですが、不眠に悩む編集者・ウタが、予備校教師フロイの催眠術で眠らされたことをきっかけに、
ふたりが奇妙な接点を持ち始める、とのことですが、これはいわゆる恋愛モノと考えてよいのでしょうか?


池里: クリスマスシーズンでもありますし、そのあたり意識していないと言えば嘘にはなりますが、今回はちょっと普通のラブストーリーとは違います。

運命を感じてひかれあうようなラブではなくて、ふたりの関係がまず現実的な「依存」から始まるというところが、ちょっと普通と違う。
眠りたいから男の能力=催眠術を必要とする女がいて、男は彼女に睡眠を提供するかわりに、カルチャースクールでもともと習うはずだった料理を彼女に教えてもらいます。ふたりでいる元々の動機が恋情とはまったく別のところにある。そんなふたりのチグハグさは物語上の工夫ですね。


それと、二人の過去が物語に大きく絡んでくる。
これは深くは言えませんが、ふたりそれぞれが自身の過去のため、どうしようもない罪の意識にかられている。
恋愛物語の一方で、そういうふたりの内的な問題が「癒されるかどうか」が今回の話の鍵といえるでしょう。


─── ひとつの場所に様々なキャラクターが集まってくる、というのはカリバカの公演ではよく観られるシチュエーションですが、今回の舞台は催眠術教室……また随分と「極端な方々」が集まりそうな設定です。


池里: たとえば、赤面症の厳島(いつくしま)君と、夜尿症の西久保(にしくぼ)君というのが出ますね……細かくは舞台を見てのお楽しみとして、そういったいろいろな個人的な悩みを抱える人たちが、たくさんでてくるお話だと思ってください。

主人公、ヒロインの関係意外のサブキャラクターたちも、それぞれドラマをかかえていて、それぞれみんなちょっとずつ傷ついたり、何かを抱えていたりするのだけど彼らの人生もまた「癒される」のかどうか、 も是非観ていただきたいポイントですね。



■夢にあってもおかしくないし、現実にあってもおかしくない。
 そういう舞台にしたかった。



  〜ここで注文していた料理が届く。オムライスと桃のネクター。以下ランチインタビュー。 ただし、池里氏はオムライスの中のグリーンピースはよけている。〜


─── さて、ここまで物語そのもの、脚本についてうかがってきましたが、
続いて演出面・舞台表現の面についておうかがいします。
前回は舞台そのものが非常に具体的なものになってましたよね。


池里: 前回の「島田」は「死」がモチーフだったので、「死」そのものを対比させて明示してやるために、リアルな生を営む人たちのにぎやかさの象徴である「居酒屋」というものを舞台にしました。
生、死を描いた前回から、今回は生と死の中間の存在である「眠り」をテーマにした。

眠ってるときって「生きている」けど「死んでいる」ともいえるじゃないですか。
そして、朝おきると、新しい次の日がはじまる。

夢にあってもおかしくないし、現実にあってもおかしくない。 そういう舞台にしたかった。だから装置も、リアルにある居酒屋とかじゃなく、少し抽象めいたデザインの方がよいかな、と思ったわけです。


─── 小道具・舞台装置に関して、抽象的なものを使うというのは、
舞台設定を明確に固定したコメディの多いカリバカとしては珍しいかもしれません。


池里: そうかもしれません。装置さんにはずいぶん悩ませてしまいましたけど。

ただし、話の内容、舞台装置と抽象的なものを扱っているので、演出・表現そのものは逆にとてもわかりやすい見せ方をしようと考えています。

もちろん光や音などで味付けはしますが、素材やテーマが催眠術、癒しといった非常に曖昧なものである中で、これで演出面まで抽象的な表現にしてしまうと、陳腐になりかねないですから。物語全体にメリハリをつけるような、演出的な冒険もしていきます。
しっかりさんと、斬新さんが共有したような舞台とでもいいますか。


─── ここで演出的なことに入るのか、脚本的なことに入るのか、ちょっと微妙なお話なんですが、
今回、カリフォルニアバカンスでも随一の名物、かもしれない、役者・大口達也さんが主人公・風呂井を演じます。


池里:

彼は今まで物語をかきまわすポジションがとてもあっていたんです。いい意味で彼ならではの自由度の高い演技をさせたかったということもあります。だから主人公にはしなかった。(笑)
ほら主人公にするということは物語を背負うということですから。
彼自身も主人公より人を笑わせるサブキャラクターのほうが好きですからね。
だから、カリバカの中でも「大口は主人公にはならないな」というムードがありました。(笑)



─── そんなムードの中で、あえて大口さんを主役にした理由は。


池里: 逆をついて、主人公になりそうにない大口を主人公にすることで意外性を出せるのではないか、と思いまして。大口ファンが求めているものと違うものか、 どうなのかはわかりませんがいい意味で受け止めてくれれば、と思います(笑)ある意味、今回の挑戦のひとつでもあります。



■ちょっぴりチンケな、癒しと再生の物語


─── それでは最後に、あらためてカリフォルニアバカンス主宰・池里ユースケからファンの皆様にメッセージを。


池里: フロイとウタを一本の話の線として、それ以外にさまざまな人間模様が織り成すちょっぴりチンケな、癒しと再生の物語です。

クリスマスだからといって、カップルじゃなきゃ見にこれない……なんていう内容ではありません。クリスマス時、一人でも見にこれる公演というのが裏テーマだったりもします。(笑)

もちろん「ラブ」もあるけれど、ちょっとずつの不運が埃みたいに積み重なって、なんだか不運であることも忘れてしまっている人々がどんな形で再生され、癒されるのか。僕らが感じている「罪の意識」は何によって癒されるのか。そんなことを考えながら作った公演です。

いつもどおりくだらないギャグも物語に散りばめ、不思議なエンターテイメントにできればいいかな、と思っています。彼女(彼氏)いねーし、一人だし、なんか少しつらいし、という人にも。倦怠期のカップルにも。もちろん絶賛恋愛中のあんちくしょうも。カリフォルニアバカンスと 「眠り」と「癒し」について考えてみませんか……というところですかね。






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